二度目の緊急事態宣言の効果だろう、2月に入って新型コロナウイルス感染者数が減少中だ。その一方で、重症者はそれほど減らず、死者数は着実に増えている。
 理由は、感染者に占める高齢者の割合が増加しているためだ。免疫弱者を狙う「分断ウイルス」ゆえだが、コロナは同時に、社会的弱者もターゲットにしているように思える。
 
 国会でコロナ対策の特別給付金を求める質問に、菅首相はこれを否定し、「最終的には生活保護という、そうした仕組み」があると答弁し、物議をかもしている。
 その背景には、近年一貫して増え続けている生活保護受給(約165万世帯)の問題が横たわっていると思われる。いまは親族に対する扶養照会の取り扱いが話題にのぼるが、より本質的な、保護費支給の物価算定基準が国の恣意で変更されたことは、各地で裁判になっているのに、メディア報道は不十分に見える(この件は、私の元勤務先の同僚記者だった白井康彦氏が精緻な論考をしている)。
 
 当院にも生活保護の患者さんたちが通院する。もともと精神的な問題を抱え、仕事のできなくなった人もいるが、やむを得ない事情で経済的困窮に陥り、うつ状態になる人もいる。
 そういう人のため、まさに生活保護がある。法学部卒として、憲法25条の社会的生存権が根拠であることを強調したい。まさしく首相の言う「セーフティーネット」なのだが、現実は厳しい。
 最近、保護受給中の女性患者が市役所からこんな通知を受けた。「セイホ(生活保護の略)のメンタルの人は自立支援を受けないといけない」。自立支援とは、「心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度」(厚労省HP)のこと。
 それぞれ別個の目的を持った制度だが、「公助」という点では同じだ。ここから先は推測だが、生活保護予算がひっ迫しているので、「お上」からの圧力あるいは現場の忖度があるのではないか。その証拠に、ほかの患者でも、同様の“指示”を受けたため、当院から説明を求めると、法的根拠はないと撤回された。
 分断ウイルスでギスギスした世相であるからこそ、こう問いたい。
 菅さん、国民の実情をもっと見つめてください。“ガースー”じゃなくって、「さーすがー」といわれるトップになってくれないと、次は、無いよ。