この週末から県をまたぐ移動制限が解け、プロ野球(無観客試合)も始まった。コロナ第二波対策として、感染者との接触が分かるアプリも利用できるように。“経済と生命”両立のための生活様式を求めてということなのだろう。
 
 毎週行く蕎麦屋で初めて、入店時に「お熱を測らせていただきます」といわれた。店員が一瞬、看護師に見えた。赤外線感知器を額でなく、手首にピッ。〔どうせやるなら正確に橈骨動脈に当ててほしかったが、形式だけということか?〕。36度5分。何度以上なら入店拒否か、きくのは止めた。

 当クリニックにも、このところ、症状のない「高体温」を治療してほしいという患者さんが続いた。
 18歳、発達障害(自閉スペクトラム症)の男性Aさん。3か月前に人間ドッグを受け、37度4分。朝は36度台でも夜37度5分を超える。病院で調べ異常なかったが、障害者雇用の職場は休まざるを得なかった。「雨が降ると38度になる。上司は何も言わないけど、仲間内で敬遠された。」と付き添いの父が代弁する。
 医者がコロナでないと判断しても、周囲が認めようとしない。念のため、チェックがまだの甲状腺ホルモンとカテコラミン値を測定し正常と確認、漢方(補中益気湯)を処方した。この薬は体質で生じる高体温に有効との研究がある。2週間で熱は落ち着きつつある。
 
 34歳のプログラマー男性。以前からストレスで下痢になる過敏性腸症候群を患っていた。ことし4月中旬から微熱が続いた。高いと37度7分。だるさもあったので内科受診したが胸部X線に異常なく、血液炎症反応も陰性で当院紹介。
「会社で、早く病院行って来いといわれた。熱の原因のことを考えて余計ストレスがたまった」

 体温は脳の奥、視床下部に調節中枢があり、さまざまな理由で上昇する。基本は「感染症、腫瘍、膠原病」。この三つに匹敵するほど、じつは”高体温”のひとが多い。その筆頭は女性だ。月経周期で排卵すると高温期に入り、かなりの人が37度以上になる。そうでなくとも、体温は日内変動し、朝より夜が4~5分高いのは普通だ。
 子どものころ風邪症状がないのに、熱のあるとき「知恵熱だ」といわれた。その裏には、勉強ばっかりせんと体動かせという大人のメッセージが隠れていた〔実際は勉強ばかりしていたわけではない〕。医学的にも、脳を使い過ぎると中枢で発熱することが判っている。

 コロナ対策でマスクはもはや国民の常識となったが、熱中症には気を付けないといけない。同時に、お互いの監視に“熱中”しすぎて、上記のような人たちを「患者」にしないでほしいと思う。