第一波が治まった国内のコロナ禍だが、制限解除が進む東京では、また感染確認者数が増加してきた。そんななか、この春中止になった第92回選抜高校野球大会出場予定32校の交流試合開催が決まった。今週末からは延期されていたプロ野球も始まる。“遅れた球春”の到来だ。
 
 1年半前、パニック障害の40代主婦が当院を訪れた。薬を極力使わず、ゆっくり話を聴き、漢方と頓服で切り抜けて最近は発作も出ない。
 彼女には高校2年になる二卵性双生児の息子がいる。病状安定で2ヶ月に一度の受診の際、コロナ禍で気になることを尋ねた。
「子どもたちも自宅待機が長くて、いらいら気味だったんです。二人は別々の高校で、ともに野球部なんですけど、やっと部活できるとホッとしたみたい。以前とは練習の仕方も変わりましたね。熱中症も心配なので、グラウンドで練習中はマスクを外すけど、それ以外のミーティングなどはマスク着用。着替えも感染リスクなようで、泥だらけのユニフォームのまま家に帰ってきます。本来は制服に着替える規則みたいなんですけど、こういう時期ですから。試合のある日の移動も、以前ならバスだったのが、今はそれぞれ自家用車で家族が送迎しています。でも県大会ができるようになって喜んでました。なので巨人の選手が(PCR検査で)陽性とニュース聴いて、ビビってましたね。甲子園は、今2年生なので、自分たちのことよりも、先輩のことを心配してました。ぼくたちには来年があるけど、って」
 
 戦争や戦前の米騒動を除き、甲子園野球が中止になったことはない。球児だけでなく、野球を人生の楽しみにしている人たちにとっては、途轍もないことなのだ。
 パチンコや麻雀、ナイトクラブなど、「不要不急」のことどもは控えるべきだというような同調圧力がこの国を覆ってはいまいか。なにが必要火急なのか、ギャンブルが当てはまるならスポーツはどうなのか。芸能は、文化は、、それは他者の介入する筋合いではない気がする。
 江川卓さんもたしか、こう言っていた。「たかが野球、されど野球」