わが国のコロナパンデミックはひとまず第一波を越えた。とはいえ北九州市のようにいつ再燃するかも知れぬ中、テレワークが広がっている。ちょうど、本日の中日新聞サンデー版が特集を組んでいて、当欄でも取り上げる次第。
 テレワーク(telework)のテレはギリシャ語の「遠く離れて」の意味。テレビジョン(vision=見る)や電話(テレホン、phone=音)でおなじみだ。サンデー版によると「情報通信技術を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」が定義だが、要は在宅勤務。東日本大震災後に12.5%まで増えた後下降し、今回再び“新記録”を更新した。
 
 当院にも、テレワークにいそしむ会社員たちが患者として通うが、恩恵よりは被害をこうむるケースが目立つ。
 50代の男性。理系大学院を出て大手メーカーに就職。20年以上研究職として働き、5年前初めて畑違いの部署に異動。上司の当たりが厳しく、眠れなくなって1年半前に来院した。穏やかだが苦笑交じりの口調はsmiling depression(=ほほえみうつ病)と呼ばれる状態だった。
 治療で睡眠を確保、悩みを聴くことで安定し、1年が過ぎた。そこへコロナ禍。組織変更があり、テレワークが始まった。激減した4月の業務量を5月に挽回しろと上から指示されるが、「電車通勤は不可。自家用車は許可するが、高速代は自腹」といわれ、再度うつ状態に陥った。
 これも50代の男性。6年前、東日本大震災の復興関連の仕事で過労が続くなか、発作的に首を吊ろうとした。実家の愛知県に戻り、当院初診。元々建築関連の仕事で阪神大震災の時、現場に駆け付けられなかったことを悔やみ、東北入りしたのだった。
 休職を助言し、うつ病の治療開始。回復し、東北での仕事に戻って5年。昨年再度愛知県に戻り、フォロー中に、コロナ対策で上司と食い違い、テレワークを指示された。「大声でわめきたくなった。テレワークの設備もない中で自宅に缶詰め。家でできる仕事ないのに」。ほとんど飲まなくなった睡眠薬にまた頼らざるを得なくなった。

 サンデー版にはジョン・メッセンジャーILO労働条件上級専門官のコメントが載っていた。
「管理職、テレワーカー、同僚は相互信頼が必要。テレワーカーには事務所で働く同僚と同じ権利、同等の労働条件の確保が重要だ」
 嘆くだけでは、解決しないのだろう。ピンチはチャンス。コロナ版テレワークは、労働者の団結を高める“離れた枠”を組み立てるための格好の場だと思う。