明けましておめでとうございます。
 令和改元して初の正月を迎えた。俳人中村草田男は昭和改元後、二つ前の時代を回顧し、降る雪や明治は遠くなりにけり、と詠んだ。二十代後半までを昭和で過ごし、当時“新人類”と命名された世代としては、自然とまなざしが落日の地平線に向かう。
 今やスマホなしでは暮らせない。AIが生活の隅々にまで行きわたる予感を覚えつつ、パソコンのキーボードを叩く。新聞の発行部数は右肩下がりを免れず、ネットニュースで大晦日の紅白歌合戦が史上最低の視聴率と知った。一億総中流はとっくに瓦解し、個人の集合体としてたゆたう。
 吉本隆明の「共同幻想論」を読んだころのことを思い出す。ガロの「学生街の喫茶店」♪時は流れた♪というフレーズが脳内でリフレインする。そういえば、最後に書初めをしたのは何年前のことだったか。旧知の人に思いを馳せる年賀状の枚数も、Facebookの友達の数より少なくなってきた。
 それでも―—。生物としてのヒトがそんなに急に変わってしまうわけではない。箱根駅伝を観ながらつつく雑煮の味は、むかしと寸分違わない。昨年4月から中日(東京)新聞健康面で コラム「元記者の心身カルテ」を毎週火曜に綴っている。その関係で、当コラムの本数が始めて以来最小となった。心身カルテは3月末まで。筆を擱いたら、時流に乗って、Twitterでつぶやいてみるか?
 本年もよろしくお願いいたします。