体温並みの猛暑が続くなか、『第30回愛知サマーセミナー』に参加した。
愛知県内の社会科教師有志が「学びたいことを学び、教えたいことを教えるような企画ができないか」と話を持ち寄り、名古屋市で「社会科サマーセミナー」を実施、好評だったことから、県私立学校教職員組合連合で話を詰め、今の市民参加型講座形式になった。
企画立案は教師だけでなく、各学校生徒や父母、OBも加わる。誰でも無料参加できる文字通り草の根の教育関連行事だ。

今年は区切りの30回目ということもあり、名古屋市の椙山女学園キャンパス(小・中・高・大学)で7月14~16日にわたって開催された。
その趣旨に賛同し、手弁当で教える講師陣は豪華多彩。名誉校長の佐藤康光日本将棋連盟会長・九段の将棋講座・指導対局のほか、常連の佐藤優、森田実氏らの特別講座、憲法施行71年企画、夏休み宿題お助け講座まで硬軟取り混ぜ、さながら“花見弁当”のような内容に驚いた。

150以上に及ぶ講座のなか、海の日の16日に僕が聴講したのは2つ。
午前の特別講座、中日・東京新聞社会部望月衣塑子(いそこ)氏による『何故・菅長官の会見に臨むのか~安倍政権とメディア~』。
望月さんは武器輸出と軍学共同問題で調査報道を進め、平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受け、現政権の監視役として官房長官会見で質問を続ける気鋭の記者。
その小柄な体躯からは想像しがたいほどはっきり通る声と大きな身振りで、笑いも取りながら、マスメディアの役割や民主主義の危機について、400人の聴衆に熱く語りかけてくれた。

午後は滋賀の湖東記念病院人工呼吸器事件で冤罪当事者となった西山美香さんと日本国民救援会伊賀カズミ副会長による『再審・えん罪を考える』。
15年前の5月22日、脳死同様の72歳男性が病院で死亡した際当直だった看護助手の西山さんが人工呼吸器のチューブを外して殺したと逮捕立件され、有罪確定し12年の刑に服した事件だ。
障害を持っているせいもあり、捜査当局のシナリオに沿って自供した結果、殺人者の汚名を着せられて十数年。20~30代のかけがえなき時代を失った西山さんは穏やかにこう言った。
「私は不運でしたが、不幸ではありません。こうやって皆さんが冤罪を考えて下さるので」。

今ほど、連帯と協調が必要な時代はこれまでの日本には無かった気がする。ひとりひとりの声は小さくとも、団結集合すれば、大合唱のように鳴り響く。岩にしみ入るような蝉しぐれのなか、そう考えた。