ダウン症候群ーー21番常染色体異常で起こる先天性疾患。通常より一本多い3本存在することで主に発症し、約1000人に1人の割合で現れる。心奇形など身体疾患や知的障害を合併しやすく、特徴的な顔貌を呈するーー
3月21日は、疾患のカギとなる染色体の数字にちなみ、「世界ダウン症の日」に制定された。ダウンは発見者の医師名が由来だが、半世紀前にWHOがこの病名を正式呼称とする以前は、目尻が上がり、鼻が丸くて低く、低身長の体型から「モンゴリズム」(蒙古人症)と人種差別的に呼ばれていた。研究では欧米と東アジアでのダウン症候群の発生率に差は無く、チンパンジーでも相当する例が報告されている。

当院に勤務する看護師の息子Tさん(42歳)がダウン症である。
昭和50年、予定日より1ヶ月早く助産院で生まれたTさんは産声無く、すぐに大病院に搬送された。母親が振り返る。「この子は発達が遅いよ」とは言われたが、ダウン症と告知された記憶は無い。
動脈開存症という心疾患の合併で、夜も座ったままでないと喘鳴(=呼吸困難)のため寝られなかった。歩き始めたのが2歳過ぎ。皮膚も敏感で病院通いが続いた。
親御さんが一番気にかけたのが、言葉だった。舌が長く、口蓋が高いため、カ行が発音できない。「スプーンでベロを抑えて、発音させたりしました」。
教育方針といった大げさなものを持っていたわけではない。ただ、みんなと分け隔てなく育てたいと言う思いはあった。地元の小学校は当時、特殊学級が無かったが、越境せず、2年までは普通学級で過ごした。「授業参観で机に突っ伏して寝ていても、変わらずに接してくれた」と笑う。
近所に絵画の先生がいて、小学4年生からひとりで通った。卵の殻の色塗りから始まった絵の腕は徐々に開花し、途中から陶芸も始めた。絵画で玄人はだしの腕を持つ父と競ってきた結果、一般の作品に混じって表彰されるレベルにまで達した。
Tさんはいま、回転寿司店で働く日々。知り合えた友人と毎年、友だち記念日に旅行もする。そこに「障害」の影は見られない。

女優の東ちづるさんは、誰も排除しない「まぜこぜ社会」を目指して法人を立ち上げ、さまざまなエンターテインメントを企画、実現してきた。インタビューで、こう答えている。
「生きづらさを抱えた人もそうでない人も一緒に暮らせる社会を目指したい。まぜこぜは嫌だという人も排除しない。全ての人がマイノリティー。宇宙の視点で見れば、違いは小さい」

Tさんの絵画のモチーフには必ず動物が出てくる。人も、動物も、生きているという点では同じだ。むしろ、この地球では先輩の動物たちに教えられることは多いに違いない。
ミミズもオケラもセイウチも人も、まぜこぜに生きられるのが理想。彼の絵を観ていると、そう主張しているように思えてくる。