平成29年も今日でお仕舞い。干支の酉(トリ)年に掛ければ、表題のごとく「立つ鳥、跡を濁さず」。われら一宮むすび心療内科もあと1ヶ月で今の場所を立ち去り、引っ越しすることに。患者さんには移転先の説明を始めているものの、「こんな便利なところでやっていて、なぜ移るんですか?」と訊かれることもあるため、今年最後の当欄でお伝えしようと思った次第。

平成25年夏。当時上林記念病院勤務だった僕は、休日に開業物件を探していた。知人を通じて見つけたのが、現在地のテナントだった。JR尾張一宮駅徒歩3分の至便。鉄筋3階建の2,3階に会社経営の大家が住み、1階部分をその会社から借りる“軒先貸し”だったが、スケルトンで自由にレイアウトできるので、即決した。
26年4月8日、灌仏会(かんぶつえ)のおめでたい日を選び、門出を飾った。心身医療を生まれ育った地でというわが思いは順調に展開するかに見えた。
大家は「良い人」だった。大家分の駐車スペースが空いているときは使用許可してくれたし、雪の日は雪かきスコップを貸してくれた。しかし、入居時に抵当権が設定されており、ほどなく大家の会社が自己破産するとは想定外だった。当院ホームページには建物全体が写っているので、院長所有のビルと勘違いする患者さんもいたが、当院は家賃を支払う店子の立場だった。
任意売却が何回か不調に終わり、しかも管財人が途中で“辞めて”しまうハプニング〔これには、いまだに腹が立っている〕もあって審査が長引き、裁判所による売却が行われた。当院も競売に参加したが、ことし夏落札したのは、1億円を超える額を提示した地元A社だった。
「バブル期のような地上げ屋だと困るが、地場の老舗会社なら再契約してもらえるだろう」と当初は高を括(くく)っていた。だが、裁判所から指示されたA社の担当者に何度連絡しても、返事はなかった。
8月1日夜。速達で内容証明郵便が届いた。A社代理人の弁護士からだった。立ち退きするよう求める文章が記されている。「やられた!」、、、、、、愚痴をこぼした知人はほぼ例外なく「営業権あるんでしょ。立ち退き料もらえば」という。
しかし、法律的にはそれは的外れだ。当院入居時に抵当がついている以上、競売で当ビル土地を取得した新所有権者には対抗できない。しかも、A社は損害金として毎月、家賃の約2~3倍の金額を要求、期限内に出ていかなければ違約金500万円を求めてきた。
半年は法律の猶予期間があり、家賃相当額を供託する選択肢もあったが、移転先が見つからなければ、当院は“空中分解”せざるを得ない。やむなく和解を進め、年末に成立した。
問題は移転先だ。いろいろあって結局、市内中心地、真清田神社隣の旧則武医院を借りることができた。故則武克彦先生は2年前、トライアスロン中に50代の若さで急逝された。残念至極だが、同院ビルに住む奥様が使用を快諾してくださる心の広い方だったのが幸いした。〔クリニックは2階でエレベーターがありません。車いすの方の対応は困難です〕  

というわけで、一宮むすび心療内科を応援して下さる皆様に。よいお年を!