3月3日〔上巳〕は桃の節句。起源をたどれば平安時代の昔から、貴族階級子女の厄除けが目的で行われていた。その後江戸時代になり、他の階層にも遊びが広まった。そのさい雛(ひな)人形は女の子にふさわしいと、5月5日〔端午〕を男の子の節句としたのと対にして、庶民に普及した。

“女の子の日”を前に、地元の保健師さんたちに講演をした。主題は、女性に特有のうつなど精神疾患について。新聞記者から医者になったという経歴はときどき珍重されるが、自分としては特に、他の心の専門家との違いをあらためてお伝えしたい。
いまでは義務化された全科研修を経て、精神科医の道に進んだが、一番長く所属したのが産婦人科病院の心療内科(足かけ9年)。男にはできず女性にしかできないことといえば、「出産」。ホルモン分泌など劇的な生理的変化を機に、抑うつ状態になるケースが多い(ざっと10人に1人)。授乳と内服の問題もあり、多くの精神科医が忌避する分野で頑張ってきたと自負している。

男女差の一番大きな心身の病は摂食障害だが、うつ病も性差のはっきりした病気だ。
女性の罹患率は男性のおよそ2倍。「か弱きもの、汝の名は女なり」というわけ。ただし、自殺率は逆に男性が多い。結果、自殺者の数は男性が女性の2倍となる。男の沽券(こけん)、というやつが邪魔するのか、うつ病の男性患者さんは、ぎりぎりまで頑張って、ポッキリ枝折れする印象だ。(最近は男女差が無くなりつつある気もするが、今後の課題だろう)。

全員女性の保健師向け講演では、最初にエジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)の説明をした。
EPDSは1987年、英国で産後うつ病のスクリーニングのため開発された。10の質問に答えるだけの簡便性や、健康な妊産婦さんとそうでない人との鑑別ができる信頼性などから国際的に普及し、日本でも翻訳版が出て、著作権の問題なく利用することができる。
インターネットで誰でも閲覧できるが、当欄読者の便を考え、質問項目を掲載しておく。それぞれ、いつもと同様にできた(あった)~まったくできなかった(なかった)までの4段階で答え、3~0点で得点化。合計9点以上はうつのリスクあり〔これで診断するのではない点は注意〕とされ、再度2週間後にチェック、それでも高得点だと受診が勧められる。

1)笑うことができたし、物事の面白い面もわかった
2)物事を楽しみにして待った
3)物事がうまくいかない時、自分を不必要に責めた
4)はっきりした理由もないのに不安になったり、心配になったりした
5)はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた
6)することがたくさんあって大変だった
7)不幸せな気分なので、眠りにくかった
8)悲しくなったり、惨めになったりした
9)不幸せな気分だったので、泣いていた
10)自分の体を傷つけるという考えが浮かんできた

以上の項目を見ればわかるように、産後でなくてもうつ病の症状に一致するのでは?と思われた方、その通りです。産後うつ病はうつ病の中のひとつ。そして、女性だけのうつ病です。今後、使用が一般的になっていくようにと願いつつ、本日はここまで。