人から頼みごとをされて、そりゃぁ場合によりけりだ、と答えたくなる事がある。英訳してみれば、It depends. となろうか。dependを辞書で引くと「頼る、依存する」と訳されている。pend の語源はぶら下がるだから( ペンダントpendantと同じ)、コアラの子が母に捕まるように、誰か/何かにしがみつく雰囲気がよく出ている。
元プロ野球選手清原和博氏が覚醒剤所持で捕まって1年。その後、歌手のASKA氏が同様に逮捕され、興味本位な報道のあり方も問われるなか、今日は頼ることについて、ひとこと。

キヨマーやASKAは、精神医学的にいう覚醒剤依存症。日ごろ、いろいろな依存症の患者さんと相対している。 いわく、アルコール依存症、ニコチン依存症、、。これらの物質(薬物)依存に対し、異性交遊やパチンコなど人間関係や特定の行動に対する依存症もある。
最近多いのが、“インターネット依存”。カッコつきとしたのは正式な病名ではないからだが、その本質は同一で、脳内の報酬系という部位が制御しずらいタイプの人たちに多いと見られている。嗜癖(しへき、addiction)と呼ぶこともある。かつて流行ったテレビCMをもじった“カッパえびせん症候群”〔やめられない、止まらない〕で説明すると納得される。

依存症の詳しいメカニズムは昨年の当欄や成書をご覧いただくとして、他のメンタルクリニックに比べて多く診ているのが、「 食べ物依存」つまり摂食障害だ。
自分の“意思”で食べ過ぎたり、食べなかったりするのではないか?いまだにそう捉えている方が多いのに驚く。特に家族からそういった見方をされると、本人は辛い。
多部瑠奈 さん( 25歳)は一児の母。小学2年で両親が離婚、妹と母の3人暮らしも18歳まで。母が娘たちを置いて別の男性の元へ。街で出会った男性の子を宿したが、関係は続かず、未婚のままシングルマザーに。つわりがきっかけで、出産後も食べるのが苦痛となり、あちこち病院を回った。子を保育園に預け、夜の仕事に就いてたころ「吐けばいいんだ」と気づいてからは、過食に転じた。
やせ願望がそれほど強いわけではない。 ただ、どこかで、自分を罰したいという気持ちが潜むのを当院に通うようになって自覚し始めた。「過食に頼っちゃいけないことは分かってるんだけど」という瑠奈さんに僕は言う。
「過食嘔吐自体は悪くも何ともない。 あなたがそれで自分のストレスを吐き出し、幸せになれるのなら。でも実際にはそうなっていないね。その根っこのところを一緒に見つめて行こう」。
「グァム島の横井庄一さんやルバング島の小野田寛郎さんみたいに、誰にも頼らずに生きていくことは、今の僕たちにはできない。人は、何かに頼って生きざるを得ない。小さい頃に上手く頼れなかった反動が、今の過食につながっているのかもしれないね、、、」

先日、人の視線が気になる若者がマスクをして顔を隠す「マスク依存」が拡がっているとテレビ報道していた。コミュニケーション能力の低下を憂う専門家のコメントが流れたが、なんの、マスクして外出できるのなら、それも良し。
「伊達直人だって、タイガーのお面を着けてたよね」。