プロ野球名球会会員の清原和博氏(48歳)が覚醒剤所持容疑で捕まった。ホームラン数歴代5位を誇る”番長”逮捕のニュースは号外で出され、球界のみならず多くの人達に衝撃を与えた。

覚醒剤(カクセイザイ)。その語感に圧倒される人もおられよう。英語ではAwakening Drug。Wake(目覚め)させるドラッグ。芸能界でその薬物汚染が繰り返し話題に上る。のりピー(酒井法子)やチャゲアスのASKAが記憶に新しいが、より深刻なのは、闇ルートの出物が市民レベルにまで浸透していることだ。この機会に少し、覚せい剤の知識を当コラム読者とも共有しておこう。

19世紀末、生薬の麻黄(まおう)からエフェドリンが抽出された。そこからドイツで合成された覚醒剤がアンフェタミン。さらにわが国で依存性のより強いメタンフェタミンが合成された。第二次世界大戦では戦闘員の眠気を取り、戦意高揚に利用された。同盟国でも連合国でも事情は同じ。国内では戦後もメタンフェタミンが「ヒロポン」「ゼドリン」として市販されていた。裏社会では資金源として利用され、芸能界にも広がるようになる。
薬理作用を説明する。脳にはドパミンという神経伝達物質をやり取りする神経線維のネットワークがあり、覚醒剤はこうした部位に作用してドパミンを過剰に分泌させる。その結果、過覚醒や爽快気分を生じるわけだが、連用すると耐性が生じ、以前と同じ用量では効果が出にくくなる。「もっと、もっと、、、」というワケだ。
副作用として、交感神経刺激症状がある。血圧上昇して散瞳、発汗、口渇が出、易興奮状態となる。精神疾患の統合失調症ではドパミン過剰状態となり、覚醒剤精神病では同様に幻視、幻聴などの幻覚や妄想に陥ることがある。

当院に通う覚醒剤精神病の塀野中男さん(38) は前述した症状をすべて経験している。
17歳の夏、商業高の同級生からシンナー を教わり、18歳でやめたのはいいが、19歳から覚醒剤との付き合いが始まった。
大阪に出てホスト生活中はドラッグ無しで過ごせた。しかし、勤務先が潰れてお決まりのパターンにハマる。再度のシンナー、そして覚醒剤。フラッシュバックで精神科入院治療を余儀なくされた。再犯を繰り返し、覚醒剤取締法違反等で計10年の刑務所生活。当院初診は4回目の刑期を終え、出所翌日のことだった。
決していかつい男ではない。むしろ気の弱い、どこにでもいる青年で、礼儀正しい。ただし、いったん症状が出ると、周囲が自分を陥れるという被害妄想にかられ、せっかく入社した職場を辞めてしまう。3回目のフラッシュバックの時は、母からのメールに絵文字が入っているのを見た瞬間、「誰かが自分を嵌めようとしている」と妄想が広がった。

清原選手は3年前、KKコンビとしてPL学園以来の盟友桑田真澄投手に「もう連絡せんでくれ」と伝えたという。事実上の絶縁状態。昨年は四国お遍路めぐりをし、離婚して会わなくなった子どもへの想いをブログに綴っていた。塀野さん同様、決して”番長”などではなく、根は気の弱い男なのだろう。