10月4日は世界動物の日。中世イタリアのカトリック修道士、アッシジのフランチェスコの祝日にちなんだ動物保護デー。神の前では人も動物も平等と説いたこの修道士、”小鳥への説教”などで名高い聖人だ。その記念日を前にして悲しいニュースが報じられた。
3日朝、徳島市内の道を盲導犬と歩いていた山橋衛二さん(50歳)がバックしてきたトラックにはねられ、犬とともに死亡した。現場は歩道のない幅5mの市道で、道路脇の資材置き場に入るためバックした2トントラックの警告音が鳴らなかったという。盲導犬は黒のラブラドル・レトリバー”ヴァルデス”。10歳のオスで、高齢による引退を目前にしての悲劇だった。

ペットロス症候群という心の病がある。正式な疾患名ではないが、文字通りペットを失くし抑うつ状態に陥ることで、喪失体験のひとつ。罹患率はかなり高いと思われる。
国内のペット飼育頭数は犬が1034万匹、猫が995万匹と推定されている(2014年)。犬の保有頭数が毎年減少してきているのに反し、猫は3年連続で増加中。むかし、”なめ猫”ブームというのがあったが、動物愛護法改正で自治体が引き取り拒否できるようになった影響があると思われる。
犬の寿命は以前より長くなったとはいえ、10数年から長くて20年。猫も似たようなものだ。”鶴亀”を除けば人間サマのほうがペットを看取ることになるのはやむを得ない。

当院にもペットと死に別れて抑うつ状態となり、受診する患者さんがいる。
犬塚しのぶさん(35歳)は小さい時から「自分はいらない子」と思い込んで育った。虐待やいじめがあったわけではない。ただ、親や教師から褒められた記憶はない。一度きりの恋愛も成就しなかった。
そんな彼女の唯一の慰め役が、飼い犬の”ロダン”だった。彫刻のように彫りの深い顔立ちのボルゾイ。中学生時代からの付き合いだ。学生時代も、仕事をしだしてからも、しのぶさんが専属の世話係。ロダンに嘔吐が続いたときは、有給休暇をとって獣医に通った。
なので、2年前に老衰でロダンがこの世を去ってから、すべてがむなしい。それを周囲に決して悟られないようにするのがロダンへの恩返しと思い定めている。会社の人間は彼女が悲しんでいる姿を見たことがないだろう。

ペットロスではないが、難しい家族関係を動物の世話で癒そうとする患者さんもいる。
酒向キリコさんは22歳なのにアルコール依存症予備軍。肝機能のγーGTPが300を超える。10代で摂食障害を発症、ある意味律儀な彼女は、20歳になって依存対象を過食からアルコールに変えようとした。その結果のガンマ300なのだ。
病気のきっかけはよくあるダイエット願望ではなく、家族、とりわけ父との確執にある。つねに妹と比較され、良い子を演じるよう強いられてきた。
臨床心理士とのカウンセリングを当院で続けるキリコさんは、新たな職場に希望を見出そうとしている。犬の大好きな彼女はトリマーの資格を取り、ペットショップで働き出した。ワンちゃんのシャンプー、カットに精を出すときだけは、過食やお酒の誘惑から逃れられる。

大家守代さん(29歳)は気分の波が激しく、実家を出てひとり暮らし歴7年。最近かわったペットを飼い始めた。
家賃節約のため築数十年の平屋を借りる守代さん。ある夜、壁際に一匹のヤモリを見つけた。最初はきまぐれだったが、世話をすると情が湧(わ)いてくる。古家を探すと、いるわいるわ、いまや7匹のヤモリの”家主”となった。
ヤモリとイモリの違いもわからぬ職場の同僚に話をするのが最近の楽しみだ。エサはコオロギ。ペットショップで購入する。ちゃんと売っているのだ。「7匹とも顔がみんな違う。ちゃんと区別できるよ」と自慢し、気分の波もよい様子だ。

哺乳類にせよ、昆虫にせよ、ペット動物とのふれあいが精神的安定をもたらすのは経験的には明らかだ。私事になるが、拙宅では茶のトイプードルを飼っている。10歳オス。名前は”チョコ”。浅田真央ちゃん飼育の”エアロ”にそっくりだ(トイプはどれも良く似ているか、、、)。さてと。今夜も散歩に出掛けなくっちゃ。