箱根山の噴火警報が気象庁から発表された。水蒸気の上がる大涌谷周辺での避難指示報道に、昨夏の御嶽山噴火を思い起こした人も多かろう。わが脳裏に浮かんだのは29年前の伊豆大島の噴火だ。

――昭和61年11月15日。東京都心から120km離れた伊豆大島の三原山が噴煙を上げた。古来、島では信仰の象徴として「御神火(ごじんか)」と呼び習わし、観光にも貢献してきた。しかしこの年の噴火は規模が違った。6日後、カルデラ山腹のあちこちの割れ目からマグマが炎柱を噴き出したのだ。NHK記者の中継で語った言葉が耳に残る。「もうこれは観光のための噴火ではありません!」。
当時、東京新聞社会部にいた僕に取材の命が下った。ヘリコプター上空から噴煙を見て記事にする。島に降り、通信部を拠点に現地取材。噴火は勢いを増し、溶岩流が元町集落に押し寄せる。ゴジラの皮膚のようなマグマ目前まで迫ってのルポ報告も行った。表面が冷えても中心は1000℃の高熱の塊。
島全体が火山床に乗っかっているようなものなので、どこから噴火するのかわからない。その緊迫度は今回の箱根の比ではなかった。全島避難。島民1万人まるごと船で脱出という前代未聞の事態。彼らは1ヶ月、都内体育館などで過ごした。――

箱根山避難指示の記事の隣に地球温暖化の記事が載っていた。
米海洋大気局によると、世界の大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が観測史上初めて400ppmを超えた。産業革命以前は280ppmだったとされ、上昇分の半分が1980年以降のものという。専門家は「大気中のCO2濃度上昇を止めるには化石燃料からの排出量を80%減らす必要がある」と指摘する。
化石燃料とは石炭・石油のこと。火力発電に頼らざるを得ない現状ではCO2濃度上昇は避けられないと思われるが、代替エネルギーのひとつに地熱発電がある。火山国のわが国では有力な再生可能エネルギー、ただし開発コストなど課題は残る。すぐにできる対策として、マイカー通勤を週1日のみにし、残り4日は公共交通機関にすれば随分抑えられるが、、、。

伊豆大島に戻った人たちにインタビューしたとき返ってきた言葉は一様に「やっぱりうちがいい」だった。それは、生まれ育った土地以外に住む場所はない、という決意からだけではないように感じた。椿咲く平均気温16度の町が根っから好きなんだ、とでも言わんばかりの表情が読み取れた。
三原山はこれまで約100回の大噴火を起こしたと考えられている。その名は母の子宮をあらわす「御腹(みはら)」に由来する。きょうは母の日。