2月14日はバレンタインデー。歴史的にはチョコレートと全く関係がないそうだが、いまや我が国製菓業界の存続がかかっているので、この際由来はどちらでもよろしい。今日は、チョコを貰って困る症状の出る人のためのお話。

片頭痛(migraine)。片方の頭と書くので、両側とも痛いのは片頭痛でないと思い込んでいる人がいるため伝えておくと、左右ともに痛むタイプの片頭痛は多い。頭痛学会がこの疾病を定義している。ポイントは①拍動性(ドクンドクン脈打つように痛む)②運動や体位変換で痛みが増強する③吐き気や嘔吐、光や音に過敏になる――など。前兆があるタイプとないタイプがあり、女性に多く、家族にも同様症状を持つひとがある。(遺伝病ではない)。
でも、なぜバレンタインデーに片頭痛?と思ったあなた、最後まで読むとわかります。
その前になぜ頭痛は起きるのか?から。
痛みを感じるのは末梢神経線維が通るところ。じつは脳そのものは痛みを感じない。中枢神経である脳細胞自体に痛覚はないのだ。なので、脳腫瘍除去術のとき神経麻痺を避けるため、麻酔から覚めた状態で執刀することがある。
頭部に痛みを感じるのは、大きな腫瘤による圧迫を除けば、脳内血管が刺激された時ぐらい。何らかの機序で血管が拡張すると、そこを通る神経線維が圧迫され、痛み物質が産生される。だから、脈の拍動に合わせてズキズキガンガンするのだ。
で、なぜチョコレートから片頭痛か、だった。
チョコレートやココアの原料はカカオ豆。成分の一部に、チロシンというたんぱく質から産生される「チラミン」が豊富に存在する。このチラミン、うつ病でよく話題に上る神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミン)とよく似た構造を持っていて、血管収縮と、その反転としての拡張作用がある。その結果チョコやココアを摂りすぎると、頭痛を起こすというわけだ。
ちなみにチラミンを多く含む物質には赤ワイン、熟成チーズ、空豆、無花果(イチジク)などがある。
亜玉割田代さん(24歳)は幼少時から頭痛に悩んできた。バッファリンやイブなどの常用者。生理前になると「またくるのか」と憂鬱になる。最近は天気が悪いだけで起きるようになった。前述の拍動性、体位変換での増悪、嘔吐など典型的な症状で、母娘2代にわたる片頭痛持ちだ。
ひと月に鎮痛剤を10日以上飲むことも多く、薬剤誘発性頭痛も疑われた。つらいが、市販の鎮痛剤を止めてもらい、予防薬をのんでもらった。同時に、チョコ・チーズをつまみにお酒を飲むのを禁じた。痛み発作の初期にトリプタン製剤という高価な薬を投与したところ、以前よりずいぶん改善したという。痛いときには冷やすこと。温めて良くなるのは筋緊張性頭痛のほうだ。

片頭痛は古来、著名人も悩ませてきた。進化論のダーウィンに精神分析のフロイト、ピカソに樋口一葉。一番有名なのは芥川龍之介だろうか。遺作ともいえる『歯車』は、題名自体が片頭痛の前兆(閃輝暗点)を表している。一読をお勧めする。
というわけで、本命チョコのオニイサンや義理チョコのおじさん、友チョコ・自分チョコのオネエサンたちへひとこと。「チョコはちょこっとネ」。