「成人の日」の前日に学区主催の成人式があり、町会役員として赤飯作りに参加した。地元小の体育館で催された会は、振り袖姿の新成人が司会や校歌伴奏を担当したりと、手作り感漂う好感の持てる式次第だった。きょうは成人について考えてみたい。
成人式のもとは奈良時代に始まった元服である。冠婚葬祭の四字熟語に残る通り、おとなになった証しとして冠(烏帽子)をかぶる儀式。この通過儀礼の実施年齢は時代や身分によりまちまちだが、おおよそ15歳前後だった。(古事類苑によると、天皇の元服は11~15歳)。
もちろん往時の子どもが現代っ子よりはるかに早熟だったゆえの制度ではない。社会的擬制が要求された背景には平均寿命の短さがあったと僕は推理する。たとえば武士は家督を継ぐことが人生の一大事だった。後継者の育成が家の存続に関わる。つまり早く結婚して子どもをもうける、さもなくば養子を取って後を託す者を決めておかないと、いつ疫病や戦さでお家断絶の危機が訪れないとも限らない。
それ以上に重要な元服の意義は、形式が内容を規定することでの集団社会の安定化にあるのではないか。役職に就くことで仕事ぶりばかりか人柄まで変わる人がいる。「きょうから一人前になれ」と強制されることが精神を強靭にする引き金になるのだろう。刀となるべき鋼(はがね)に焼きが入り、強くしなやかになるように。
いっぽうで、そのプレッシャーに負けてしまう若者がいるのも事実だ。
継野以矢男さん(32)は町工場の2代目を父にして育った。仕事は自動車製造の部品作り。手作業も必要で職人技的なスキルも必要になる。ベテラン従業員は先代からの雇い入れ。親子で勤めて来た者もいる。
継野さんは漠然と大学で工学部を選んだ。理数系の方が得意だったから。家業を継ごうという意識は当初はなく、一回は普通の事務系会社に就職したが、「人間関係がいや」で1年で辞めた。その後はアルバイトを繰り返しながら20代後半になり、「このままではいけない」と思ってはみるものの、自宅でぶらぶらする生活が続いた。
家業の帳簿をやりくりする母親亜希子さんの助言で、これもなんとなく実家の仕事に納まった。一応知識はある。なんとかなるかな、、。そこに立ちはだかったのが、父親の継野一鉄さんだった。
「甘い気持ちでやってもらっては困る」「もういっぱしの成人なんだからな」――”成人”という父の言葉が耳にこびりついて消えない。ほかの従業員の手前もあったのだろう。あの「巨人の星」の父、一徹ばりの雰囲気を醸し出していた。わずか3か月で仕事に出られなくなった。
亜希子さんは言う。「4つ下の弟が生まれて、しばらく手がかけられなかったんです。長男だし、勉強、勉強と言い過ぎたのかも、、」。以矢男さんは小学校6年の時、90点の算数テストを母に見せて「あと10点どうして取れなかったの?」と言われたことが今も頭から去らない。「そんな子どものときのことにこだわる自分が情けない」。
3年前に僕の勤める病院を受診した以矢男さんは、うつで1回入院し、いったん回復したかに見えたが、その後症状がくすぶり続ける。抗うつ薬と休養だけでは無理と判断。臨床心理士によるカウンセリングを始めた。僕が開業して、一宮むすび心療内科に移ってからもカウンセリングを継続している。まだ、出口は見えない。
彼の成人式がどんなだったか、次の診察で訊いてみようと思う。そしてあの歌、『人として』(作詞武田鉄矢、作曲中牟田俊男)を贈ろう。
「♪ 私は悲しみ繰り返す そうだ 人なんだ ♪」
ゲーテ先生も言っている。「涙とともにパンを食べた者でなければ、人生の味はわからない」とね。
1月11
コメント一覧 (12)
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- 2015年02月04日 23:18
- うささん(*^^*)
Kiroroの「未来へ」の歌詞、わざわざ綴ってくれてありがとう。
私も、この歌、大好きです。
昨年はあなたのコメントのこと、否定的に言ってしまってごめんなさいね。本当はそんなこと思っていないの。あなたの素直さが羨ましかったのは事実です。今は、本当に悔やんでます。私は、家庭の悩みがあり、だけど、このネット上で全部は告白できないんです。それで、私のコメントを最初にいろいろな皆さんに叩かれてしまったことがどうしても頭から離れずとても辛かったんです。許して下さいね。
あなたは素直で純粋な女の子だと思っています。コメントが素直でかわいいからわかります。若いって素敵ね。
きっと、娘からしたらちょっとお姉さんでしょうね。
その若さと純真さを忘れずに、お仕事や友達を大事にして毎日を少しずつ頑張ってね。
うささんを応援してますよ。私も(*^^*)
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- 2015年02月03日 12:56
- 今日は、節分
まことさん
あなたには、家族
娘さんがいますね。
私がいつも…両親を想う時の歌です
Kiroroの
未来へ
ほら、足元を見てごらん
これが、あなたの歩む道
ほら、前を見てごらん
あれが、あなたの未来
母がくれた、たくさんの優しさ
愛を抱いて歩めと繰り返した
あの時は、まだ、幼く意味など知らない
そんな私の手を握り
一緒に歩んできた
ほら、前を見てごらん
あれが、あなたの未来
未来へ向かって、
ゆっくり歩いて行こう。
人になるには、歩む事かなぁと思いました♪
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- 2015年01月31日 18:57
- 人間の目が前にあるのは、前を向いて生きていかなければならないからです。
という名言があります。全く当たり前のことですが、人は過去の失敗やひどく傷ついてしまったことは残念ながら相手の方と話し合っても結局和解できず、残ってしまうことってありませんか。特にこうしてお顔のみえない同士の皆さんのネット上のご意見だからこそ、「言葉」ってとっても大事だと今さらのように思っています。そして、人の感じ方は違って当たり前ってことも、私なんかに気を使う必要はありませんよ。(*^^*)
「挫折」ととっても、「挫折じゃない」ととっても私たち読者の見方なんて違ってもいいじゃないですか(*^^*)「彼」の人生は彼がどうにかする人生なんです。そして私たち読者の人生も…。
以矢男さんがご自分に似てると思って、みんな悩んでるんだ、私一人じゃないんだと少し元気が出ればそれはそれで、いいじゃないかと思います。
前向きに、ポジティブにって大事ですけど、無理にいつもいつも頑張ってたら疲れてしまいますもんね。確かに「石の上にも三年」という言葉があるように、一年で退職してしまわれたことは、彼以外に、彼のご両親だっておそらく、がっかりされたことと想像します。
なぜなら私も年頃の子供をもつ親だからです。
うささんがおっしゃるように、私も皆さんと意見が違っても気にしません。大丈夫です。
みんな、今まで生きてきた人生が違うんだから当たり前ですよ(*^^*)
そしてお題の「人」ですが、人間は生まれたばかりでは人ではない。人に成っていくんだって言葉がありますが、自分の人生がいつか最期を迎えたとき、「いろいろあったけど人としてまあまあいい人生だった」って思えたら自分は、まあまあ幸せだったんじゃないかって思える人生にしたいと個人的には思っています。
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- 2015年01月30日 14:05
- 継野さんの色々な人生経験が挫折なのか?次へのステップのバネや糧となるのか? 私は挫折と書いてしまい、失礼しました。 それは私の経験から感じたことであり、自分中心の受け止め方でした。 彼の真の気持ちは彼自身にしか分からない、というか、受容の段階を経るように、彼の気持ちも変化するのではないかと想像します。
色々な仕事を経験したことも、一所に落ち着けず、辛いことだったのか? 違う社会や人間関係を知ることができて視野が広がり良い経験であったのか?その両方なのかもしれません。 私の貧しい人生経験と稚拙な憶測で感想を言葉にしてはいけなかったと反省しています。
自分に言い聞かせる言葉ですが、“人間万事塞翁が馬” まさに問題を抱えているときと、長い目で振り返って見る場合で、出来事のとらえ方も変わります。 直面する問題への対応力、心の痛みなどの耐久力、回復力も人それぞれです。 薬の効き目も人によって差があります。
他の人はたくましいとうらやましく思うだけではしかたがないのですよね。 “まぁ、私らしい” と受け止めて、そこから、歩き出さないと。
むすびの先生は、そんな個人の背景も配慮して対応して下さるので信頼できます。(私は、何度言っても伝わらないなぁと先生をがっかりさせていることでしょうね。ごめんなさい。それでも、亀のあゆみであれば…、なんて、亀に失礼ですね。)
私の無知なつぶやきはどうでも良いです。
真の願いは一つ、継野さんが、ご家族や先生方のサポートをうけながら、焦らず出口への歩みを進めていかれることを願っています。
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- 2015年01月26日 15:10
- 私は、以矢男さんの人生の中で、新卒で事務系の会社を一年で退職してしまったこと、決して「挫折」ではないて思います。
工学部を卒業したのなら、普通は技術、製造部門の会社を選択して「設計」などを目指し、工業系の道を目指すのが普通だと思います。事務系の会社に入ったなら、きっと周りは文系出身の人たちが多いことだったと想像します。
その中で、あくまで私の想像ですが、もし、いじめや嫌がらせがあっても我慢して働き続けてしまったら重度のうつになって、働けない体になってしまったらもともこもないからです。
「一年で退職」。結構だと思います。そしていろんなバイトを経験。彼にとってそのモラトリアムな時間は大正解です。
小さな頃に巣くってしまった完璧主義なんか、このさい、思い切り捨てた方が良いと思います。
今は、家族の方々に支えられて、しっかりカウンセリングをしていただき、自分がやりたかったことを思う存分生かせて、今までの自分の知識や勉強が花?開く場所は、お父さんが頑張って経営しているこの工場なんだと気づいて下さい。
私は、継野以矢男さんが、継野良加男さんに変わっていくことを応援して、「いきものがかり」の唄の「YELL」を贈りたいと思います。
良かったら聴いてみて下さい。とっても良い唄ですよ。応援しています。
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- 2015年01月25日 21:25
- TohU さんへ
私も、今週は体調が思わしくなく
マイナス思考になりましたが
やはり、歌とは、どんな時も
励みになりますね♪
お互い無理せず。ゆっくり頑張っていけたら
よいね♪こちらこそいつもありがとう♪
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- 2015年01月24日 18:15
- うささん、有り難うございました。
他の人が辛い状況にあると、ちょっと見方を変えれば、変わってきますよ、きっと大丈夫!と応援したくなります。
自分のこととなると、なかなか難しいのはなぜでしょう。思い当たることは、自分を信じていない、自分のことを好きでないからでしょうか…。
『人として』に “翼は愚かな あこがれと気付く” というフレーズがありました。 あこがれていても現実とは違います。
“まぁ私らしい” と自分を受け入れること、大事ですね。 私も捨てたものじゃぁないのかな。 自分が嫌になったら、この言葉をつぶやきます。
本当に有り難うございました。
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- 2015年01月22日 19:25
- TohUさんへ🌠
お久しぶりです。
自分が思ってるより
会社、先生、周りには
あなたの良さ、…性格も理解されてる
事あると思いますよ。
継野さんの事も、そう思うえるなら、周りが皆同じ感覚でなくとも大丈夫かな。
私は多分…わがまま通す患者ですが。
まぁ私らしいとこのまま進みますよ♪
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- 2015年01月22日 01:06
- 「成人式」は、役所の方が計画・運営すると思っていましたが、地域の方々にお世話になったり、新成人が自主的に運営に参加したりするのですね。人生や物事の節目は、意味深く大事だと今更ながら思います。
継野さん、どんなにかお辛いでしょうね。継野さんじゃなくても“一応知識はある。なんとかなるかな”って案外、思う気がします。ただ、継野さんは最初の就職で挫折し、その後も、自分の納得のいく生き方をできなかったご様子なので、より不安が高く、自信をなくしてしまわれたのかと想像します。小学校6年の算数テストの経験は、90点でも十分なのに、100点という完璧を求められたことから、完璧じゃないと意味がないという価値観を持たれたのかもしれません。実際、そういう環境だったのか?彼が自分なりにそう解釈したのかは分かりませんが。
父親、一鉄さんの言葉は社会人の心構えや意欲としてもっともだと思います。新人に初めから結果を出すことを求めるつもりではないでしょう。初めは不安と期待が混在しながらも、できるところまで頑張ってみよう、という気持ちがあるかないかだと思います。
申し訳ありませんが(先生はご存じですが)、私は、当たり前な顔してもっともらしく言える立場ではありません。継野さんのことが他人事ではないからです。人は何とかなると言うけど、私には何とかはできない、他の人は凄いな、と思います。何とかなる、の基準も人それぞれでしょうけど、自分はたくさん失敗し、何をやってもダメだったと思っているから、ポジティブになれないのが現状です。
それでも、私が何とか仕事を継続しているのは、<むすび>を含めた周りの方々の支えと、継野さんより図太いからかもしれません。
継野さんが出口の光を見いだせるように心から願っています。
『人として』という曲、初めて知りました。教えていただいて良かったです。有り難うございました。
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- 2015年01月16日 18:48
- 今年の成人式に出席された皆さんは、阪神、淡路大震災の年の学年にお生まれになった方々ですね。今、神戸では、当時の震災を知らない世代が4割にものぼると言われています。
武田鉄矢の「人として」の唄の最後は、「それでも、人しか愛せない
」という歌詞だったと思います。
この唄は、人として人と関わり、共感したり、時には、意見をぶつかりあわせても、結局、わかりあえず、いつか「別れ」になってしまう。でも、人は、また、人を愛してしまうという内容だったと思います。
以矢男さんのお父さんは、決して頑固なただ厳しいだけのお父さんではないと思います。頑張ってほしくて葉っぱをかけている事実こそ、息子に対する愛情の裏返しです。
以矢男さん、大学の工学部まで卒業した自分に誇りを持って、ぜひ、いつかお父さんの片腕として成長して、お父さんを支えてあげてください。
何故なら、親にとって、親の自分を越えて立派になった子供の姿をいつの日か、見せてもらうことはこのうえない幸せなことだからです。そして、その時が、彼が本当に人として、大人になった時だと思います。
頑張ってください。
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- 2015年01月13日 12:47
- [成人]二十歳祝
新成人の皆さんおめでとうございます
ここ数年成人式の参加の仕方が問題化されてますが。ほんの一部の参列者だし、
最近は、色々な工夫あり、本来の主旨とは、違う成人式で良いと思いますね。
卒業して、一度に皆と交流できることは、良いと思いますね。
マナーを守っていくのも大切でしょうね。
何故?二十歳を基準にしたのでしょうか?
私は、二十歳だからといって大人に成長したとは思わなかった、
社会人として、会社に勤めてましたが、
わからない事ばかりで大変だった。
上司にため口して、今も変わらないかなぁ。
フォローしてくれた先輩、同期、がいたから頑張れたかなぁ
沢山涙流したけど
以矢男さん、コツコツ先を目指すと。前が見えていけますよ。思いますよ♪
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ありがとうざいます。
私も書けない事もあります。
ずっと、まことさんは、
なにがしたいねんと、…思ってました。ごめんなさい
何度も初コメントから、先日までの読み返してた。
最初は、強がりみたいでしたね。途中から、素直になりだしたでしょ
否定的された時は涙かとまらず、落ち込みました。
今回素直なコメントみて、みんな同じだぁて
本当は(ゆずの栄光の架け橋を)贈りたかったけど、…まことさんには、未来へ…を選びました。
私は、は今立ち止まり進めない、けど、いつか、むすび心療内科を卒業しないといけない。
誰しも、自分で治す…卒業を選ばないと、です。
周りか、ゆっくりでマイペース過ぎて、もっときびきびとしたらどうて、言われますが。私らしいと、…思い頑張ります。
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