コロナ禍ふた回り目の秋。アラ還世代にとって、10月10日は涙目(十、十)の日ではなく「体育の日」なのだが、今年はすでに8月に振り替えられている。結果論だが、これだけ感染者が減ったこの時期にずらして東京オリンピックを開催していたらなあ、と嘆くのは私だけだろうか。

そんな想いにふけりながら、本日は名古屋・金山で開かれた日本国民救援会愛知県本部62回大会に顔を出した。友人の弁護士、鴨志田祐美さんの記念講演「再審制度の課題と大崎事件」を聴くためだ。
鴨志田先生とは、滋賀の冤罪事件で私が西山美香さんを精神鑑定したご縁から知り合った。しかも、同じ法学部で1年違いだったという奇遇もあり、下戸と呑んベエ(失礼)の差を越えて、尊敬できる同志として連絡を取り合う関係にある。

講演の冒頭、鴨志田先生(以下「鴨さん」)は本日の中日新聞社説に言及した。
半世紀前の米国南部が舞台の映画「グリーンブック」 を引き合いに出し、いまだに冤罪が絶えない我が国の法曹界の実情を批難した社説子は、「再審の扉すら開かないケース」として鹿児島の大崎事件を紹介した。
殺人ではなく事故死の可能性が高い新証拠があること、検察が自分たちに都合の良い証拠のみを開示する今の刑事訴訟法の問題を指摘。映画では、留置場に拘留された黒人ピアニストが電話をかけた弁護士がロバート・ケネディ司法長官だったから助かったが、日本には「ロバート」はいないから、再審制度の作り直しが急務と説いた。
偶然にも本日の講演の骨子が ズバリ、書かれている。鴨さんならずとも、なにか見えない糸のようなものを感じずにはいられない。
先日の湖東記念病院事件国家賠償訴訟での滋賀県警による準備書面の内容を見れば、いつ、誰でも冤罪当事者になるリスクがこの国にはあるという「事実」を繰り返し確認していく必要があるだろう。
その後、誤らない、ではなく、謝らない捜査機関をチェックしていくには どうしたらいいのか、大崎事件の主任弁護人を勤める鴨さんは1時間にわたり、発生から40年以上が過ぎた事件と再審の経過に熱弁を振るった。
特に最近はクラウドファンディングで集めた資金で、周防正行映画監督がメガホンを取って実写再現をしたり、現場の様子を3DCGで再現したりと、新しい刑事事件の対応法を示した。

講演後、お昼を一緒した時、分かりやすく流れるような説明の秘訣を訊いたら、もともと演劇を志していて、中学では「無かったので、自分たちで作った」と明かしてくれた。その目元は、涙目(+、+)とは反対極の、決してくじけない細目(−、−)だった。