ところによっては1月15日までが松の内だそうなので、読者の皆様、あけましておめでとうございます――と書いて、おめでとうは無いだろうという情勢になって来た。
 新型コロナウイルスは変異種も出て勢いが止まらず、11都府県に緊急事態宣言が「発出」された。私の住む愛知県も含まれる。
 NHKテレビでいま、「医療崩壊危機の最前線」と題して、地元一宮の総合病院での苦闘を映し出している。「コロナのために救える命が救えなくなる」とナレーションが語り、かつてボーイスカウトで薫陶を受けた先輩医師が「救急は止めたくないが、、」と苦悩のまなざしでインタビューに答えている。
 国内第三波を経験して、「新型」といいながら、敵の特徴はかなりつかめてきた。このウイルスを一言でいえば“分断ウイルス”ということだろう。
 かかった人の大半は無症状か軽症。しかし、残りの2割ほどが重症化し、一部は死に至る。多くが高齢者または循環器や糖尿病など免疫力に問題を抱える人たちで、彼らと残り大勢との間には太平洋のマリアナ海溝より深いギャップが潜んでいる。
 もうひとつは感染の仕方だ。潜伏期が長く、無症状者から知らぬ間にうつり、あっという間に進行する“ステルス”型感染が対応の困難さを増幅させる。だれもがうつす側となりうるゆえ、いちばんの対策は他者との距離をとるソーシャル・ディスタンスとなり、分断は加速される。
 広がるにつれ、死亡率がインフルエンザにやや近づいてきたことから、「はやり風邪と同じ」と勘違いする人もいる。これまでの死者4千数百人を、他の病気との比較で大したことはないと論ずる向きもあるが、単純比較がナンセンスなのは、たとえば、史上最悪の惨事となった日航ジャンボ機墜落事故の犠牲者が520人だから問題ないとする議論がナンセンスなのと同じだ。人の命は数字ではない。

 地球規模でみた場合、いちばん患者の多いのはアメリカだ。その国のトップが、大統領選挙結果をめぐり、さらに分断を深め、弾劾されている。
 
 きょう、産業医面談した50代の公務員は脳腫瘍があるのに、コロナ禍でかかりつけ病院の脳外科がコロナ病棟に転用、手術を延期された。良性髄膜種でまだ余裕ありとの判断だが、本人にとっては非常に辛い。そのストレスもあるのか、年末に高熱が出た。PCRは陰性、インフルエンザが陽性だった。(今年、愛知県のインフル患者はまだ数人の報告)。

 未来の歴史家が西暦2020~21年をどう評するのか。現代を「人新世」と時代区分づけしたのはドイツのノーベル化学賞者だが、コロナ分断時代とでも名付けられるのだろうか。