早や10月。8日に一宮むすび心療内科は開院半年を迎える。お蔭様で大過なくここまで来られたことに感謝したい。きょう午前は台風18号迫りくる中、市内NPO法人「まごころ」でうつ病のお話をした。聴いて下さった40人のスタッフ、介護ボランティアの方々の熱気に、会場は冷房が必要なほどだった。

最初にうつ病のレクチャー。後半は更年期うつ病のお母さん役を選び、家族役とともにロールプレイをしてもらった。うつは体内の恒常性リズムが乱れているのが問題で、その回復のための処方箋について解説した。とくに中高年女性のうつ病には、食事療法として青魚と豆類が有効との内容が関心を呼んだ。参加者はやはり女性が多数派を占める。
生化学的にはω(オメガ)-3脂肪酸といって、イワシ、サバやサンマ、マグロなどに豊富に含まれる抗酸化物質がうつからの回復に一役買っている。TVの健康番組でもよく特集されるので、聞いたことのある方も多いだろう。医学研究データも豊富にある。また、大豆が含有するダイズサポニンは女性ホルモン様物質で、ストレスに良いという報告もある。
これからの時季に抑うつが悪化する「季節性感情障害」(頭文字をとってSADという)も女性に多い非定型うつ病のひとつだ。これには日照時間が関わっているとされる。防止法は起きたら朝日を浴びる事。「早起きは三文の得」はこのことを指していたと僕は推測する。体操などしながら20分過ごしてください。そんな時間はない?余裕を持った生活が予防の第一歩です。

今回は、最近話題に上ることの多い”新型うつ”も詳しく説明した。
従来型のうつは、メランコリー親和型と呼ばれて几帳面な中高年に多いのと比べ、新型はディスチミア親和型とも呼ばれ、周囲より自分に関心が向く自己愛型で、青年層に目立つ。
苦労や困難を回避し、責任を他者に向ける傾向が強い。「僕がうつになったのは、上司にパワハラされたせいです」。ときには「私、うつなので1ヶ月の診断書書いてください」と要求される。休職中に海外旅行を楽しむひともいるようだ。
これは明らかに従来型とは異なる。薬があまり効かない。症状がくすぶり、なかなか完治しない。ただ、単なるなまけやさぼりとは違うのは、何らかのストレス体験を契機に生じ、回復すれば別人のように変わることだ。周囲はただ本人の問題点を指摘するだけではなく、まず傾聴し、状況によっては叱咤激励することも必要だろう。
「まごころ」では、高齢者の介護サービスとともに、若い年齢の発達障害の人たちを支援していると聞いた。彼らの中に、適応障害から新型うつになって悩んでいる人がいるのも確かだ。

旧暦で10月は神無月。全国の神様が出雲国(島根)に集まって留守にするのでこの呼び名がついた。なので出雲では神在月(かみありづき)と呼ぶのだが、そのご当地、出雲大社の権宮司・千家国麿氏と高円宮家次女の典子さまが本日結婚された。同大社は縁結びの神様で名高いが、この「縁」は婚姻だけではなく、すべての関係を結ぶのにご利益(やく)があるということだ。
一宮むすび心療内科もこれから、患者さんとの結びつきを大事に診療していきたい。