せいてんのへきれき。青く晴れ渡った空に突然激しい雷鳴が起こることから、予期しない突発的な事件が起こること(故事ことわざ辞典より)

広島原爆忌の6日、愛知県扶桑町の誠信高校グランドで野球練習試合中、突然落雷がA投手を直撃し、落命する悲劇があった。新聞記事によると、大雨でいったん中断した第2試合再開後、晴れ間の下で雷に打たれた。2回裏最初の打者へ第3球を投げた瞬間、ダイヤモンドは稲光に包まれた。倒れたA 君の野球帽が焦げ、ユニフォームは胸の部分が裂けていた。
当時、愛知県全域には雷注意報が出ていたが、雨は上がり、太陽が雲間から覗いていた。バックネットには避雷針が12本。試合再開は不用意だった、とまではいえまい。少年野球経験者として言えば、普通なら試合をしたいに決まっている。要するに、事故だ。A君にはたいそうお気の毒だが、、、。

突然、といえば、その前日、日本中を騒がす出来事があった。こちらは自らの「意思」で行ったことだから、同列に扱うのはどうか、という考えもあるのは承知で記す。
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井副センター長の自死。小保方ユニットリーダーのSTAP論文の実質的執筆者として、半年前はメディアの寵児として迎えられた。わずかの間での凋落。事実憶測ないまぜとなった報道の嵐にさらされ、飲み込まれた。
僕自身、読んでいて憤慨するような扇動記事もあり、暗澹たる心持ちになっていた。その記事を支持する”普通の人々”、、、。遺書の内容を報道するメディアもあるが、この段階で”公表”されても、他人の不幸を蜜のように舐めまわす人々の材料になるのみと思う。せめてもの救いは竹市CDBセンター長が「彼は早くから責任を感じ、副センター長辞任を申し出たが、事情で適わなかった」と述べたことか。
副センター長は心療内科に通っていた、という。 助けられなかった医師の気持ちをいま、僕はおもんぱかっている。「なぜ、彼はその道を選んだのか?」。
うつ病極期の時のヒトの脳は、自分の「意思」ではコントロールできない地点にまで人を運んでしまうことがあるのは、心・脳の専門家なら先刻承知だ。世界レベルの科学者である彼が、それを知らないはずはなかった、と思いたい。

雷に打たれたA君の対戦相手高と笹井芳樹君、そして僕の出身高校は同じだ(笹井君とは同級)。その偶然が、今日のコラムを書かせた原動力だ。青天の霹靂。まだ、こころが痺(しび)れている。